観ましたよ

久しぶりに平成ゴジラシリーズ最初の作品。
このときから、今まで○○対○○だったのがVSに変わったんだよな。


この作品って、遺伝子工学や細胞工学の恐怖をテーマにして描かれている。
今になって観ると、また違った感慨に耽る自分に気づく。
平成作品、つまり平成ゴジラのコンセプトは、1954年の凶悪なキャラクターに原点回帰させるというもので、初代ゴジラが担っていた水爆の恐怖という社会への警鐘をテーマとする映画の理念を継承した形で生み出されている。
しかし30年という時間はゴジラを取り巻く環境を一変させた。
100メートルを上回る巨大なビルが林立する都市、日本各地に建設された原子力発電所から供給される電力によって営まれる現代人の生活には、放射能の恐怖も巨大な怪獣の存在も驚異の対象ではなくなってしまっていた。
時代はいつの間にか人々の恐怖という概念をも変えてしまった。
これに対するゴジラは50メートルの身長を80メートルとスケールアップし、顔の造形も70年代の柔和な顔つきから、凶悪さを増してつくられた。
過去の善玉怪獣から一変し、破壊と殺戮を繰り返す破壊神ゴジラとして誕生する。
しかし、原子力発電所を襲うシーンはあっても放射能に怯える人はなく、ゴジラに逃げまどう群衆はいても死の恐怖は伝わってこない。
30年の眠りから覚めながら、自衛隊カドミウム弾で眠らされ、超音波によって三原山に誘導されるゴジラは、変わってしまった日本の社会にさぞかし驚いただろう。
三原山の火口に飲み込まれるその姿は、悲哀すら感じずにはいられない。

ふう、何こんな真面目くさった事書いてるんだろ。
たまにはこういうのも有りかなと思っただけなんだけど、まあいいか。

最後に『妖怪の民俗学』(岩波書店、1988年刊)の著者、宮田登氏の言葉を一つ。
「怪獣、あるいは妖怪といわれるものは、人間がつくり出したものであり、かつ人間自身を壊滅に導く方向をもっていることは確かだが、興味深いのは破壊した後に人間世界を再生させようとする意図が秘められていることである」